推進管の押し切りまで
推進工事は、発進立坑から到達立坑までをマシンで掘り進めて貫通させることは、ご理解いただけてると思いますが、掘進機が到達したら工事が終わりではありません。
大抵のマシンは、施工会社の所有機またはレンタルで使用されたものですので、到達立坑から地上へ撤去されます。マシンの撤去方法は、到達立坑の下部にマシンの受け台を設置して一旦乗せるような状況にして、地上からクレーン車(レッカー車)で吊り上げます。マシンの長さが立坑の大きさより長い場合は、マシン本体を分割することがほとんどです。分割すれば、到達立坑の大きさが小さくて済みます。例えば、泥濃式推進のφ800mmマシンであれば、本体全長が5000mmほどありますが、分割作業をすることにより、最長が1500mm~1800mm程度になりますので、円形立坑φ3000mm~φ3500mm程度で地上に吊り上げることが可能になります。マシンを回収後は、所定の位置まで埋設したヒューム管等を押し込む作業があります。これを”押し切り”と呼んでいます。通常、推進中においてもヒューム管を押し進めている際に、”今日は、この○○本目を押し切って終わろう!”なんて言うこともありますが、マシンが到達して撤去した際には発進立坑と到達立坑のいずれにも人孔(マンホールがあるところ)を築造することがほとんどです。
あらかじめ、工事の設計段階で、これらのヒューム管や人孔築造の設計図が完成されていて、ヒューム管の本数も計画されています。しかしながら、この人孔とヒューム管を接続する際に、当初の管の割り付けや接続作業性を考慮し、現場合わせすることがほとんどです。これは、設計段階に計画した線形・マシンの長さの相違などが関係しています。ヒューム管の数量も決まっていますので、どの位置まで押し切るかによって、最終押し切りするためにストラット(=スペーサー)というものを使用します。ヒューム管を使い切った状態ですから、あと1000mm分を推進方向に押し込むために、下図のような形状の資材を準備して押し込みます。押し切り終わった状況が写真のようになります。押し切りは1回きりでドンピシャに押し込まないと後戻りは難しいです。
なんせ、ヒューム管を後退させるわけにはいきませんので。
私がレンタルする機材にもこのストラットがありますが、幅400mmを定尺にして5基=2000mm分を準備できるようにしています。それは2000mm以上の押し切り寸法が必要になることはほとんどありませんし、2000mm以上なら、ヒューム管を1本用意すればストラットは不要だからです。
下の写真のように、押し切った後は支圧壁の斫り(取り壊し)作業や立坑内の設備(元押ジャッキや発進台など)の撤去作業が実施されます。到達後も推進工事では片付けまで大がかりな作業がありますが、この仕事は本当に素晴らしい”業”であることには変わりありません。