推進力の低減について(その1)
昨今の推進工事では、長距離や曲線施工に加え、岩盤や玉石地盤の掘削といった施工条件がほとんどですが、この時、施工するに際しては、充分な対策を講じないと推進不能に陥ることが発生します。推進工事の専業者の方々は、すでに施工実績を積まれているので、施工前検討を実施されていますし、工事の発注前の段階で、推進力を低減する方法を組み込んだ設計・積算が採用されていることが大半です。だからといって、推進力の低減を機械装置や自動滑材注入を実施されていても、土質の相違や地下水などの影響で想定外のことが起きるのが推進工事です。
特に注意される点は、当初の設計・積算において算出されている推進力の算定及びそれに伴った管種の選定からだと思います。当初設計を疑うものではありませんし、過剰な計画を要請させることでもありませんが、大事なことは、”日本では、地中の状況が付近であろうと全く同じであるということはない”という認識を持ちながら、安全性を重視して施工に臨まれることです。
工事の発注前段階では、推進工法の選定・設計・積算などが実施されていますが、公の機関書籍や推進工法の各団体が発行している積算・技術資料を参考にされていますが、施工の可否判定や工事費の経済比較がされて工事費に反映されています。また、技術的資料も準備されていますし、万全な計画がされていますが、中には工事に関する資料が乏しかったり、設計条件として、必要な数値のみで工事費算出や技術的な算定書を作成するケースもあります。前述したように、施工条件は各々の場所で一致することはないことから、できるだけ詳細の工事関係資料を入手し、充分吟味をしてから実施することが大切です。設計段階の各種算定書は、積算従事者の土質判断のとらえ方、算定される計算式の値で大きく左右されるケースもあります。
先日も、推進延長,L=890m、1スパンの施工検討会に参加させていただきましたが、当初設計では中押ジャッキの設置が1箇所に対して、実際の施工では、2箇所にするとした判断になりました。当然、設計段階での推進力算定では1段で施工可と判定されていますし、採用工法以外の推進力算定しても中押1段で施工可となりますが、万一の推進力の増大や年末年始の工事休止期間があること、安全性を勘案して施工に臨むことを最重要課題とし、検討会に参加した全員一致の判断でした。
推進工事は、切羽のことも大事ですが、推進力がいかに低い状態で到達できるかが重要なポイントになります。
次回は、推進力の算定など、推進力低減について、もう少し掘り下げて記述してみたいと思います。