推進力の低減について(その2)
前回の投稿では、推進力の重要性について簡素に書いてみました。私も工事に関わる人間として、過去から施工中に現場監督や関係者の方々に、”今、推力どうですか?、カーブ入ってから推力結構上がったわ、とか、縁切りで○○tもかかってるわ”なんて会話をしょっちゅうしていました。今でも会話で推進力や日進量、土質のことは話題にしていますね。こと推進力は、到達できるか否かに関わることですので、現場の方々は常に緊張感を持って施工に臨んでいます。
では、推進力の算定の算定結果に対する判断や、工事にどのような気持ちで臨むべきなのでしょうか?
推進力の算定式(修正式)
F= Fo+fo×L
Fo =(Pw+Pe)×π×(Bs/2)²
fo = β{(π・Bc・q+W)k0+π・Bc・C’}
ここに、
F :総推進力 (kN)
Fo :先端抵抗 (kN)
fo :周面抵抗力 (kN/m)
Pw :チャンバー内圧力 (kN/㎡)
Pw1:切羽での地下水位
Pe:切削抵抗 (kN/㎡)
Pe = N値×10.0 ただし、N<15 Pe=150(kN/㎡)
q :管にかかる等分布荷重 (kN/㎡)
C’:管と土との付着力 (kN/㎡)
W :管の単位重量 (kN/m)
Bs :掘進機外径
Bc :管外径
β :推進力低減係数
L:全体推進延長
k0 :管と土の摩擦係数(=tanφ/2)
泥水式・土圧式・泥濃式において若干の違いはありますが、基本的な算定式には変わりはなく、各○○工法協会は独自の推進力低減の係数で補正したり、管の外周抵抗や曲線の推進抵抗割増の係数などを設定して、低推進力で施工できる算定書を作成しています。
当然、○○工法協会で実施された実績値をもとに各係数が決められていますが、発進から到達まで同一な係数で施工できるはずがなく、それぞれの土質調査した箇所での想定値も加味することが厳密ではないかと思います。
推進力の算定結果には信憑性もありますが、中には崩壊性砂礫層や地下水が多く滞留している箇所など、算定で表現できない推進力の上昇は必ずあるだろうと想定することが普通ではないかなと考えます。
設計段階では、各工法協会の計算結果に基づいて進められてきたのですが、実際に施工すると当初計画より推進力が高いといったケースも多分にあります。私は、推進力の算定書をすべて信用せずに様々な角度から私見を持って工事に臨んでいただきたいと思っています。
私の世代の業界の大先輩である方が、11年前に業界紙でつぶやかれた特集を読み直しました。お亡くなられて数年経ちますが、お会社の創設者もコラムを執筆された方も、推進工事の第一人者であり素晴しい研究者・技術屋さんだったと思っております。
この○○社長さまの執筆のタイトル、”推進力管理の基本とは?”という執筆をされていました。月刊誌ですが、発刊された当時も心して拝読し記憶に残しています。
この執筆の中で、推進力の変化から何が見えてくるか、という項目で、
1.初期掘削で流れをつかむ
2.推進状況より(→判断すること)
3.切羽の確認
4.元押推進力と縁切り推進力
5.カッタトルクで見えるもの
この5つについて簡素に書かれ、しまいに、”少しでもおかしいとか管理限界値を超えた場合、勇気を持って推進をストップし次の対策を練ってください。・・・「後悔は先に立たず」この言葉を忘れずにしたいものです。” と綴っておられました。
推進工事では、判断することがたくさんあるので、この推進力の上昇に限らず推進をストップする勇気が必要であることも記述されています。推進力は安定した推移をしていても、実際に発生している事象が後に急激な推進力の上昇を引き起こすこともあるからです。
○○社長のつぶやきは、推進工事の始まった約60年ほど前の昔からの数多い経験値であり、何かの形で後世にお伝えしていただきたいなと思うところです。