長距離施工なのに”土質の相違”って…
下の写真は2月から始まったφ900mm・泥濃式推進の施工です。推進延長は400m超えの1スパンですので、私の感覚ですと長距離施工かなと思います。
昨今は、1000mを1スパンで施工することもしばしばあるようですが、よほどのことでなければ長距離施工は、ほど良い距離で計画することが良いかなと。(私も長距離施工の設計・積算に携わってきましたが)長距離施工を実施することは、いろいろな準備も施工管理も考えておくことが大切になります。
機械屋からすると、マシンの動力線を長く太くする、掘削した土砂を坑内から吸引するために、ブロア(バキューム)の性能をより高い出力と風量にする、推進力を低くする補助的な装備を用意する、等々。
施工する立場からすれば、日々の推進力・管渠の精度・使用材料などに気を遣うことが普段より大きいのではないかと思います。工事の期間も長くなりますし、機械装置も長期にわたり使用するので、不具合も発生する可能性も出てきます。
なのに…
今回の現場は、発進して間もないうちに土質調査では普通土(シルト系主体)とされていたにもかかわらず、砂質土主体であることが掘削して判明、現場は当初の計画していた作泥材料では掘削に支障をきたすので、多く使用する予定ではなかった材料を増やしたりしながら対処するという状況になりました。推進力の推移も当然変わり、発進してからの初期段階で計画していた推進力よりも高くなっている状況で、滑材注入量も注入箇所も念入りに確認しながら掘削を進めています。
工事を設計・計画する際は、土質調査により使用する材料の数量も算出されているので、明らかな土質の相違であれば設計変更になります。ですが、使用する材料は初期段階で”材料承認”を受けてもいますし、急に大幅に変更することになっても先に材料を注文もしているので現場は困るばかりです。土質の相違だけでなく、地下水が多いところは作泥材や滑材を計画していた数量より多く必要とされる場合も多々あります。
これって、予定されていた工事代金で請負することが無理ですよね。明らかなことは作泥や滑材の費用の増加だけでなく、掘進速度が低下することによって工事日数が増える=作業員の労務費が増えることになります。使用する機材も自前もあればレンタル品もありますので、工事日数が増えればレンタル料金は増える一方です。たかが”土質の相違”では済まされないことと、さらには地中を掘進する中で予測不能な埋設物もあるということです。長距離施工になればなるほど予測不可能なことが起きる確率は増えます。どうぞ、このような状況を発注者・施主の方々にご理解をいただき、”土質の相違”という不可抗力の損失の軽減をご配慮していただきたいと思います。
“土質の相違”は推進不能ももたらす時があります。推進工事に関わる方々は、いろんな努力を惜しまず最後まで貫通・到達させていることがほとんどです。また、機械屋も工事期間が延びても延滞料金を満額いただくこともできなかったり、損傷が激しく修理代金がかかろうと尽力して推進工事に臨んでいます。
明らかな施工ミスなども時にはあるかもしれませんが、現場から”土質の相違”の報告が上がった際には、関係者方々の迅速な検討と早期のご判断を関係者の方々にお願いしたいと思うところです。