泥濃式推進工法(その1)
前回までの2回ほど、泥水式推進工法の説明をしてみました。まだまだ奥深いノウハウや技術が沢山ありますが、他の推進工法にも触れておいておこうと…。
今回は泥濃式推進工法について概要を記載しようと思います。
泥水式推進工法と同じように機械式推進では掘進機(マシン)を使用して地中を掘削します。マシンはカッター・本体外殻部・方向修正ジャッキ・”排泥バルブ”といった機材で構成されていて、泥濃式推進工法の主な特徴は、この”排泥バルブ”になるでしょう。排泥バルブなんて名称はピンとこないと思います。この業界では”ピンチ弁”なんて言うこともあります。機械式推進では、マシン内部の構造の相違として、泥水式では送泥・排泥を電気的に作動(開閉)させる電動ボールバルブ、泥濃式では排泥バルブ(ゴムのバルブ)を圧縮空気の供給により開閉させる構造になっています。また、泥濃式推進工法の大きな特徴は、カッターの回転が速い(回転数が多い、高速回転)ところにあります。これは、切羽の安定理論を考慮したことからマシンの構造を設計したものでしょう。
泥濃式推進工法の概要説明について、文献をや説明を引用すると、
”前部が隔壁で密閉された泥濃式掘進機のカッタチャンバー内に高濃度の泥水を圧送充満し切羽の安定を図りながらカッタにより掘削し、立坑に設けた元押ジャッキにより推進管等の圧入を行う。掘削した土砂は、高濃度の泥水と攪拌混合し流動化させ、掘進機内の排土バルブ(排泥バルブ)を開閉することにより、切羽を安定させながら間欠的に排土する。排土は真空力及び坑内トロバケツにより搬出する。”
とあります。
また、切羽の安定は、
”高濃度の泥水を切羽及びチャンバー内に充填加圧させ、その圧力により切羽の土圧と水圧に抵抗させ安定を図る。高濃度泥水により泥膜を形成させて切羽面に圧力を保持する。高濃度泥水の管理圧は、通常地下水圧+0.02MPaを下限とし、+0.05MPa程度を上限としている。”
とあります。
フロー図を下記に表しましたが、泥水式推進工法と同じように、マシン・排土管・元押ジャッキ・地上設備といった主要な機材を使用して地中にヒューム管等を押し込んで行きます。泥濃式推進工法を扱う工法協会も10団体ほどあります。
昭和の後半に大〇技〇さんが泥濃式の先駆け、超〇水加〇推進工法で施工されて以来、L〇C、〇流バラ〇ス、ツー〇ェイ、ベ〇ス〇モール、エ〇エ〇モール、ラ〇サ〇、等々、ほとんどが推進工事の専門業者さんが主幹企業といった工法協会が、この40年余りで設立・施工されています。以前は泥水式推進工法での発注が多かったですが、近年は泥濃式推進工法の設計採用が増えて、機械式推進の60%ほどが泥濃式推進工法で施工されているようです。
長距離・曲線施工の必要性と需要に合わせて、下水道管渠の普及率も年々増えていった時期でした。
私は、超〇水加〇推進工法やL〇Cといた工法がスタートしたのちの平成初期に泥濃式推進工法に出会い、様々な工事に関わらせていただきました。平成10年くらいまで、「泥濃式」という名称は使われていなかった当時から、今では主要な推進工法になるとは想像もできなかったことです。