地中という見えない姿

推進工事において、地下を掘削する=見えないものに遭遇する、ということで、立坑掘削工も推進工も土質調査はしていても、掘り進める先は全く見えないところを掘削していきます。私も現場に関わってきて今日まで、様々な状況に遭遇しました。土質調査は、管渠を布設する区間をすべて実施するわけではないので、想定される土質で掘削が行われています。大抵は土質調査したデータ通りの地質ですが、土の硬さが異なったり、地下水が多かったり、礫の大きさが想定外の大きさだったりすることがあります。

地下を掘削する際に厄介なこととは何か?

1.土質調査と全く異なる地質・地質の変化がある地層(互層地盤)
2.地下水の量や含水率の相違
3.想定されていない埋設物との遭遇
4.掘削路線で上下の硬さが異なる地層
5.N=3以下の軟弱地盤・硬質岩盤
6.空隙がある

などが挙がるでしょう。

土質に応じて、推進工法の選定やマシン性能の見極めが重要になりますので、柔らかい地層に岩石を粉砕する装備のマシンでは、掘進が進まない、マシンの重さで沈む傾向にあるという不具合が生じます。反対に普通土と呼ばれる地層が想定されている箇所で大きな礫に遭遇すれば、礫を粉砕する機能が無いために掘削不能に陥ります。

昨今はどの機械式推進でも様々な土質に対応するマシン性能と施工技術が向上しています。ですが、地中は見えませんし、想像するしかありません。工事が進むにつれて地中の”姿”が分かってきます。

先日、ある工事会社の方から、推進中にタイヤやゴミが排出された、鋼製スラグ?らしき硬い埋設物に当たって日進量が落ちた、というお話しを聞きました。その付近は埋め立て地で、工事開始前から埋設物を想定されてマシン選定をされていたそうですが、まさかここまで日進量が落ちるとは想定外、とのことでした。マシンの損耗も想定外だったでしょう。12mほど日進量が落ちた状況の後に、マシン前方を地上から掘り下げてカッターの確認作業を実施したそうです。

施工会社の皆さんは、施工経験で掘進中の変化を肌で感じてきているので現場での対応は万全だと思いますが、工事のリスクは大きく、ちょっとした変化が生じたら無理せず推進を止めて協議をしていただければと良いと思います。想定外なことは、後に大きな損失を受ける可能性が潜んでいます。見えない”姿”に立ち向かっているのですから、これくらい大丈夫、と高をくくらずに発注者や元請会社と充分な協議と理解を得てから無理なく工事を進めていただきたいと思います。

すべての施工条件を100%クリアできる推進施工方法は確立していません…。

岩盤層の立坑掘削

Follow Me!

技術

次の記事

泥水式推進工法(その1)