小口径推進・中大口径推進(その9)

工事に関する基本的なことを9回に渡って記述しました。(その10)まで投稿したら、以降はもう少しコアなこと、経験したことなどを掘り下げて書き留めていく予定です。今回は、推進工事には欠かせない、とういか管渠布設事業は、パイプラインの構築によるライフライン形成が主たる目的ですので、このパイプラインについて記述したいと思います。
下の写真は、”ヒューム管(推進管)”というコンクリートでできたパイプです。上下水道や電力に用いらていて、このヒューム管を発進立坑から到達立坑の間を掘進機で掘りながら前に押し進めて繋がってパイプラインが完成します。タイトルにあるように、小口径=小さな直径のパイプから大口径=大きなパイプを発進・到達の間を貫通させます。このヒューム管は、直径のサイズも決まっていて、内径200mmから3000mmまでに、250,300,350・・・1200、1350、2000など、この業界の方は頭に入っていますし、掘進機がこの内径に合わせて製作されています。それだけ多くの掘進機台数が世の中に存在します。また、ヒューム管を製作する会社もたくさんあります。そして、このヒューム管は大きさもそうですが、1本の長さ・圧縮強度・外圧強さ・差し込んで接続する箇所(継手)も異なるものが規格として多く存在します。通常はL=2.43mの長さで、強度は50N(ニュートン)管としています。発進から到達まで掘進機やヒューム管を押す力が必要になれば、強度の高いヒューム管を採用します。また、カーブする場合は、ヒューム管の長さを1.2m(半管)や80cm(1/3管)にして、曲がりやすいようにします。これらは、工事の設計・計画の段階で精査されますし、これを間違えるとヒューム管が損傷して工事がストップしてしまいます。ですから、ヒューム管が損傷しないように、押す力を低くすること=低推力(ていすいりょく)が工事には要求されます。まずは、ヒューム管の種類選定は重要なことで、高品質な製品であることが大切です。ヒューム管の耐用年数は50年とされていますが、コンクリートは酸に弱いので使用環境によっては、それ以下になります。近年、防菌・抗菌コンクリートの製品も開発されていますが、私が生まれた頃のヒューム管はすでに耐用年数くらいなので、老朽化したヒューム管は管更生という技術で補修される工事が増え、また新しくパイプラインが構築されているところも依然としてあります。
すでに、いろいろな知識が必要だとご理解いただける推進工事ですが、面白そうだなぁ、興味深いぁ、奥が深いなぁ、と思っていただければと。そして、このヒューム管の製作に携われた方々へ、この国の多くの街の環境整備の貢献者として敬意を表すところです。

全国ヒューム管協会
https://www.hume-pipe.org/

φ2000mmヒューム管

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